SNSの心理的圧力 ~拒否されることからの逃避~

本論は、現在日本で多くのユーザーを持つSNS(mixiとTwitter)の利用の仕方と拒否不安との因果関係について検証したものである。SNSとは、ソーシャル・ネットワーキングサービスの略であり、ネット上のコミュニティサイトであるにもかかわらず、友人、知人など顔見知りとのコミュニケーションを楽しむという趣旨のサービスである。SNSはアメリカ発祥であるが日本にも多数存在している。その中で、日本最大のSNSと言われているのはmixiである。mixi内には様々なコミュニケーションツールがあり、中でもよく使われているサービスは、「日記」と「ボイス」である。そこでこの2つの機能について上記の因果関係について比較しながら検証することにした。しかし、2004年にサービスを開始したmixiは歴史がまだまだ浅く、社会心理学的な研究があまり進んでいない。そこで日記やボイスと似た使われ方をし、研究が進んでいるブログを参考にしたいと考えた。ブログは、ホームページに日付けを伴って時系列に蓄積される日記コンテンツのことである。ブログもアメリカ発祥であるが、そのブログが日本に伝わってくる前に「ウェブ日記」という同様のコミュニケーションツールは日本にも存在していたため、日本での歴史はSNSよりも古い。社会心理学的な研究も「ウェブ日記」時代から行われており、その中で書き手の継続意向に影響を及ばすモデルを検証したものがあった。私は、その研究の因果モデルのうち、フィードバックの存在について述べている部分に注目して、「個人特性としての拒否不安度が高い人ほど、ショック度が高いmixi日記よりもショック度が低いボイス/Twitter を使用する」という仮説をたてた。

この仮説を検証するために、本大学の生徒231名にweb上で質問紙調査を行い、統計的に分析を行った。その結果、以上の仮説は棄却された。特に、ボイスとTwitterを合成し、日記と「つぶやき型」の比較として行った分析は、異種のサービスを同等に扱ったためか、全く有意な値は出なかった。しかし、この分析により、拒否不安が高すぎるとSNSのサービスに投稿すること自体をためらい、日記であろうともボイスであろうとも使用しないのではないかという結論が得られた。また、統制変数としていれた自己開示項目が分析で有意であったため、自己開示欲の強い人は、気軽に投稿できるボイスの機能性に惹かれ日記よりもボイスを使用しようとするのだろうと解釈した。さらに、今後のための研究として今回得られたデータから補完的に行った分析によると、拒否不安が極端ではないがある程度高い人は、日記よりもボイスを使用するということがわかった。