街のアイデンティティ~東京の社会構造を屋外掲示物から読む~

目的
本研究は、屋外掲示物が街のアイデンティティを表現する役割を果たしているというArlene Davila(“Marketable Neighborhood”, 2001)の理論にしたがい、東京都内の各地域における屋外掲示物の種類や動向を調査する。そして、得られた結果と統計資料の関連性を考察し、その地域の社会構成を探るものである。

調査対象地域について
松本(『東京で暮らす 都市社会構造と社会意識』、2004)は、大都市東京の地域構造を六つ(目次参照)に分類している。そこで本研究でも、その地域構成パターン別に、それぞれの地域の社会的な実態分析を進めた。

調査対象
「商業目的ではない掲示物」の量や質も含めて、二つの側面から、各街の差異化を図った。

考察
屋外掲示物が地域の経済指標やアイデンティティの記号として機能するというDavilaの主張は、東京のように元来単一的な言語・文化で構成されてきた社会においては、現在のところ必ずしもあてはまらない。しかしながら、現在、地域ごとにアイデンティティの枠組みを超えた経済的格差、またはアイデンティティを確立するような取り組みが活発に行われている。この点を考慮すると、今後地域ごとの差異はより強調されていく傾向にあると考えられる。また、各地域での広告や掲示物が増加すれば、その傾向が屋外掲示物に如実に反映されていくことになるだろう。