テレビ番組におけるジャンルのボーダレス化の検証

従来「報道」「バラエティー」「スポーツ」など、テレビ番組におけるジャンルのボーダーは明確であり、正確に分類することが可能であった。しかし近年、ジャンルのボーダレス化という現象が生じている。中でも興味深いのが、両極にある報道とバラエティーの融合である。これら二つのジャンルのボーダレス化の結果、情報バラエティーという新たなジャンルが定着した。

番組ジャンルのボーダレス化の変遷を辿ってみると、そのはじまりはワイドショーにまでさかのぼる。『木島則夫モーニング・ショー』の放送開始によってワイドショーが誕生した1960年代。その後1980年代には『ニュースステーション』や『ズームイン!!朝!』などの番組によりニュース戦争が始まり、2000年代に突入して「ワイドショー」から「情報バラエティー」とジャンルの形が変化を遂げた。

このように、現代の情報バラエティーはワイドショーに大きく影響を受けている。そのため同時多元性や情報の断片化・モザイク化などのワイドショーの特徴を情報バラエティーも受け継いでいる。これらの特徴は情報の見せ物化という現象に結びつき、番組の制作者側が話題性や有名性といったことを意識することによって視聴率競争の優位に立とうとする姿勢が伺われる。またワイドショーや情報バラエティー番組において、司会者の存在は大きく、司会者はノンバーバルな独特な語りによって視聴者と親密な関係を築こうとする傾向がある。

このような特徴を踏まえた上で情報バラエティー番組の「今」に迫るため、慶應義塾大学新聞研究所教授の萩原滋の二回に及ぶ先行研究を参考に、現在放送されている番組を取り上げて内容分析を行った。対象としたのはフジテレビの公式ホームページ内で「ニュース」「情報番組」のジャンルとして紹介されている番組のうち、平日の帯番組である『めざにゅ~』、『めざましテレビ』、『とくダネ!』、『FNNスピーク』、『FNNスーパーニュース』、『ニュースJAPAN』。2006年6月1日放送分、計6本の内容分析を行った。

方法としては、ニュースのソフト化という側面から番組の内容面を、そして出演者の発言率という側面から番組の形式面の分析を行った。結果、全番組を通じてのソフトニュースの割合は時間量にして51%と、やはり先行研究に比べて増加の傾向にあることが分かった。出演者の発言率に関しては、今回の内容分析ではあまり明確な結果を得られることができず、反省点が多い。その原因として、発言頻度を調査するための項目、「リード」「論評」「対話」の定義があまり明確でなかったことが挙げられる。しかし出演者の発言率からは、番組が持つイメージとの関係性を垣間見ることができた。たとえば『FNNスピーク』や『ニュースJAPAN』は出演者の発言のほとんどがリードであった。上記2番組のように硬いイメージを持ち、純粋なニュース番組に近い系統の番組は、アナウンサーがリードによってニュースを導き、それ以外は特に発言しないという本来のニュース番組で取られていた形式であることが分かる。

上記以外には、番組構成が放送の時間帯によって大きく左右されていることが分かった。たとえば朝の時間帯は視聴者が慌ただしく移り変わっているため、ニュース項目は短く、多い。そして番組の途中からでも必要な情報を得ることができるよう、同じニュース項目を繰り返し放送することもある。また、ニュースのソフト化が進む中、ソフトニュースを一切取り上げない『ニュースJAPAN』のような純粋なニュース番組が現代にも存在するという事実も興味深い。

最後に、ジャンルのボーダレス化の行方について考えてみたい。まず、インターネットという新たなメディアの誕生によって、速報性はテレビではなくインターネットに求められるようになっていくと考えられる。では、今後インターネットとの差別化を行うためにテレビに求められることとは何なのか。それは、テレビ独特の空間を利用し、人間味あふれるスタイルでニュースを伝えていくことだと思う。そういった意味でも、今後情報バラエティーはさらに増えていくと予想される。純粋なニュース番組の減少が叫ばれる一方、情報バラエティー番組は難しい内容を噛み砕き分かりやすく伝え、報道をより身近に感じてもらうことができる。さらに、番組を通して出演者の様々な意見を紹介することで、視聴者はそれに賛同したり反論することができる。すなわち視聴者は一方的なニュースの受け手に留まることなく、その内容に対して自分の考えを持つことができるようになるのである。こうして視聴者がニュースに対して主体的に関わっていくことができるようになれば、情報バラエティーというジャンルの存在意義も強まり、今後さらに評価されることとなるだろう。