ウェブログにみる視覚的匿名性が及ぼすオンライン状況での自己開示への影響

今ウェブログという新しいメディアの登場によりインターネットを通じて発信者となるための垣根は格段に低くなり、インターネットというバーチャルな世界の中で万人が情報の発信者となりうる環境が整備された。今までは他者からの介入を受けない紙の日記や従来の個人サイトで行われてきたこのような行為は、他者からのフィードバックを得られるようになったウェブログにフィールドを移すことでどのように心理的影響を受けるようになったのだろうか。特に既存の個人サイトや紙の日記同様に個人的な内容を記事としてウェブログに投稿する心理は、CMC状況下においてどのような変化が生じているのだろうか。 2章でCMC状況下におけるインターネット心理、3章で自己開示に関する先行研究をそれぞれ紹介している。しかしウェブログという新しいメディアに完全に合致するような先行研究は存在しなかった。そこで今回はウェブログで日記をつける発信者の心理、とりわけ自己開示が、長期間公開にさらされることによる要因、他者からのフィードバックによる要因、また実世界の自己と同定されない視覚的匿名性による要因とどのように関係しあっているのかを研究、分析した。

分析・研究するにしたがって以下のように仮説を立てた。
仮説:1.ウェブログにおいては私的自己意識のみならず公的自己意識も高揚される。私的自己意識の高揚に始まり、継続的な書き込みを続けるにつれて公的自己意識も高揚される。(自己開示の度合いの低下、おそらく量的(広さ)ではなく質的(深さ)に)→アーカイブに残ることで自己を客観視することが可能になるため
2.匿名性の度合いの強いウェブログほど自己開示の度合いが大きい(ウェブログも例外ではない、という程度の意味で)。
3.トラックバック件数、コメント件数が多ければ多いほど公的自己意識への移行度合いは大きくなる。
4.公開度合いが高ければ高いほど(コメント、トラックバック件数が多ければ多いほど、あるいはインターネット上に露出される時間が長いほど)自己開示は減少の傾向をとる。→相互性が高まり、CMCと状況下での効果よりもより対面状況的は効果が生じ、自己防衛的になると思われるため。
分析は無作為に抽出した100件のウェブログの内容分析を行った。

分析の結果は以下のとおりである。自己開示の親密度、難易度がより浅く難易度は低く変化していったことに関して、インターネット上に自分の自己を開示するということにおいて、他者の目を意識し始めた、あるいは自分自身による自己の開示を監視し始めた結果、自己意識の中の公的自己意識が高揚した結果であるということができる。よって仮説1は支持されたといえる。一方でほかの要因間では有意な結果を得ることができず、結果それ以外の仮説は支持されなかった。