自由民主党ウェブサイト動画分析 ――今、足りない要素は何か――

 政党ウェブサイトの動画コンテンツの内容を分析し、現在の政党動画の改善すべき要素を探ることが本論文の目的である。現在若者を中心に、インターネットが政治情報接触の主要な手段になりつつある。一方で、各政党がYouTube上にマイチャンネルを設けるなど、日本でもウェブ動画が政治活動に本格的に採用され始めた。しかし、現状では視聴回数は伸び悩み、動画自体も視聴者が満足できるものではない。どこを改善すべきなのか、その要素を内容分析を通じて考えることで、今後の政党ウェブサイトの動画のあり方を考える。

 分析対象は自由民主党のウェブ動画とする。YouTube上のマイチャンネル開設も早く、動画をトップページに待ってきていたり、現在も上部にサムネイル付きで動画コンテンツへのリンクを張っているなど、動画コンテンツに対して他党の先駆けとなっていること、注力していることが理由である。本論文では、キャスターの語りやスタジオでのトーク、テロップ、効果音、挿入映像など、現代の制作技術を駆使して表象されるあらゆるモードが分析対象となりうるマルチモダリティ分析を先行研究とした。分析項目として、音声、テロップ、人物、背景、内容、に着目した。分析動画は以下の3本である。

  1. 「谷垣禎一SC内閣総理大臣メッセージ・各大臣紹介」
    (2010年10月15日にアップロード、3分25秒)
  2. 「≪J-Station NEWS≫ 中曽根新参議院議員会長に聞く_2010.08.12」
    (2010年8月12日アップロード、5分31秒)
  3. ANN Newsより「参議院の新議員会館が開館 旧館の2.5倍の広さに」
    (2010年7月1日アップロード、1分8秒)

(1)で得られた視点をもとに、(2)(3)と比較を行うことで、更に改善点を探った。

 分析より得られた改善点は以下4点である。映像、音声、テロップ、内容に共通する単調さがテレビ放映の視覚的快楽になじんだ視聴者の苦痛につながること。映像、音声、内容に共通する、情報量が少なさが動画というメディアに対する視聴者の期待を裏切ってしまうということ。そしてテロップや背景の音楽の使用法が、ニュースに近い映像を使用しつつも、視聴者が慣れ親しんだニュースの形式とは異なることで、違和感を与えてしまう、ということ。音声、映像の臨場感の欠如。

 この改善点を踏まえて対策を考えると、日常の活動の様子など背景に新情報を追加する、政治家が視聴者に語りかける動画は独立させてページ内に埋め込む、動画を短かく分割し、タグなどを付けて検索を容易にすることが考えられた。