日本におけるプロダクト・プレイスメントの運用実態

本論文は、ハードディスクレコーダーの普及や、メディア接触状況の変化に伴い、日本のテレビCMが十数年前のような効果が得られなくなっているという背景をもとに、新たに注目を浴びている宣伝手法の一つであるプロダクト・プレイスメントの日本における運用実態を分析、考察したものである。

プロダクト・プレイスメントとは、映画やテレビ番組の中で特定の製品やロゴを露出させたり、登場人物のせりふにブランド名をだしたりすることで、宣伝効果を期待するものであり、ハリウッド映画などで使用されていることで知られている。そこで、本論文では、そのプロダクト・プレイスメントが日本においては、どのように運用されているのかを映画、ドラマを用いて分析、考察した。まず第一章では、現在日本のメディアをとりまく問題、その中で注目を浴びるプロダクト・プレイスメントとは一体何なのかを述べた。さらに第二章において、プロダクト・プレイスメントの先進国といわれるアメリカ、そして数多くのドラマでプロダクト・プレイスメントが使用されているという韓国についての先行研究を取り上げた。

後半、第三章からは、本論文のテーマである、日本におけるプロダクト・プレイスメントの使用実態を映画とドラマを用いて分析した。映画では、2000年以前のアニメ、時代劇を除いた歴代興行収入ベスト5作品として、「失楽園」、「踊る大捜査線」、「リング2」、「ぽっぽや」、「ホワイトアウト」、そして2004年に上映された作品から、「世界の中心で愛をさけぶ」、「天国の本屋~恋火~」、「下妻物語」、「69」、2006年の映画中、興行収入がトップであった「有頂天ホテル」を取り上げた。年代別に分け、プロダクト・プレイスメントが新たな広告手法としてここ数年で多く利用されるようになっていることを証明するためである。さらに、時系列での変化を見るため、シリーズ化した映画として2003年に上映された「踊る大捜査線2」を対象とし、1998年の「踊る大捜査線1」との比較も行った。また、ドラマは2000年以降の高視聴率ドラマ6作品、「Beautiful Life」、「やまとなでしこ」、「HERO」、「GOOD LUCK」、「プライド」、「エンジン」を対象とした。分析の方法は、韓国ドラマに関する先行文献の類型を参考とし、製品類型別、方法別、形態別で登場回数をカウントした。

分析の結果、2000年以前と以降を比較した場合、映画、ドラマともに登場回数は増加していた。登場回数が多い製品部類としては、食品類、自動車、衣類であることも明らかになった。しかし、食品や自動車、衣類、携帯電話などはスケールとしては小さく、やはり、専門のエージェントが存在し、プロダクト・プレイスメントが広告手法として定着しているハリウッド映画や韓国ドラマと比較すると、日本におけるプロダクト・プレイスメントはまだ発展途上といえる。

本論文の分析での課題は、登場したプロダクト・プレイスメントが実際に「広告メディアとしての映画やドラマ」を意図したものであるか否かという点が不明瞭なことである。また、その映画やドラマの視聴者は、視聴後に商品やサービスへの認識が変化したのかなどの検討も今後の課題となった。また、今回はあくまでも登場回数での測定をしたが、露出秒数によってタイミングなども効果に大きく影響を与えると考えられるため、今後の分析項目設定時の課題としたい。