青年期の友人関係における感情表出の制御と友人関係の満足感・自尊感情および社会的スキルとの関係

 従来青年期は親しい友人との親密な関わりを特徴とする時期であると言われてきた。しかし現代の青年はお互いに傷つけあうことを恐れたり、個人の領域に踏み込まれないようにしたりするために、友人との深い関わりを避け、表面的な楽しさを追求する傾向が指摘されている。しかし、彼らも決して友人との深い関わりを不必要だと考えているわけではなく、一見友人関係が希薄であるように思われる現代青年も、個人的には自分のありのままをさらけ出すような友人関係を理想としていることも指摘されている。

 友人というカテゴリーの中には、特に親しく内面的な深い関係を期待する「親友」と、表面的な付き合いを期待する「友人」がいる。現代青年もこの「親友」と「友人」を区別しているが、内面的な部分での両者の区別はあいまいなものとなってきている。すなわち、衝突や傷つきを避けたいがために、「親友」に対しても自分の本音をさらけだすような深い関係を築くことのできない青年が多くなっているのである。

 自分の感情を本来とは異なる形にして表すことを「感情表出の制御」という。友人関係において感情表出の制御を行うと、本当にお互いを理解し合っているという充実感や満足感が得られない。また自分を偽って表現していることから、自分自身に対する信頼や尊厳を傷つける。しかし同時に、感情表出の制御はプラスの面も持ち合わせている。感情表出を制御することは重要な社会的スキルであり、社会での適応と円滑な対人関係をもたらすのである。従って、感情表出の制御はマイナス面とプラス面を持ち、表出しようとする相手や場の状況によって、プラスかマイナスのどちらかがもう一方よりも優位に作用するのではないかと考えられる。

 友人関係において考えると、もともと表面的な付き合いを期待する「友人」に対しては感情表出の制御が行われても満足感や自尊感情は低下しないと思われる。逆に制御を行うほうが本来のお互いの関係に合った適切な態度であり、社会的スキルは高いのではないか。一方本来自分をさらけ出したい相手である「親友」に対して感情表出の制御が行われる場合、満足感や自尊感情が低下すると思われる。また、本来のお互いの関係に合った適切な態度ではないために社会的スキルも低くなるのではないか。