効果的な選挙啓発:京都市の投票率を向上させるためのコミュニケーション方法の考察

メッセージの受け手への情報の流れ方というものは関与の高低によって変化する。低関与の場合、送り手からのメッセージが受け手に反証されることは少ないので、低関与下での広告メッセージが受け手の行動に与える影響は比較的大きい。このことは営利分野の広告のみならず、選挙啓発などの非営利分野の広告の場合でも言えることである。しかし、京都市レベルでの選挙は国政選挙に比べて低関与であるにもかかわらず、現状ではその関与の高低にあわせた訴求が行われているとは考えにくい。そこで、関与に焦点を当て、京都市レベルでの選挙の選挙啓発モデルを立案した。

モデルを考えるにあたっては、関与をひとつの軸にとることのできる「ロシター・パーシー・グリッド」と「FCBプランニングモデル」を採用した。この2つのモデルから、京都市での選挙啓発においては、訴求内容は具体的且つ簡潔にするべきであるという結論を導き出した。この結論と、各媒体の特徴、また、コストの負担者とベネフィットの受け手が一致するというほかの非営利分野にはあまり見られない選挙啓発の特徴を踏まえた上で、各媒体における選挙啓発の手法を提案した。

さらに、アメリカで行われた「ROCK THE VOTE」を参考に、投票率が特に低い若年層への訴求も立案した。テレビによって低関与である若年層の有権者に投票について考える機会を与え、その上で「選挙のお知らせ」はがきをリマインダーとして用いることで、テレビによって啓発された際の投票するという意思と、選挙当日に投票に行かなかった場合の自我との間に生じる認知不協和を利用して、有権者が投票行動を回避することを避けるように方向付けるというものだ。可能な範囲で試算をしてみた結果、この若年層に対する啓発によって27000~36000人もの20代の有権者に投票行動を促すことができるという結果を得た。

選挙啓発という分野に、関与の高低をはじめとする営利分野で用いられている広告理論を導入したことにより、この論文で提案した啓発モデルでは、かなり効果的な啓発が可能になると思われる。