テレビCMのタイアップソングの考察

本論文は、テレビCMのタイアップソングの現状はどのようなものか、そして今後どのようになっていくかを考察したものである。

テレビCMのタイアップソングは、音楽業界と広告業界の提携の産物である。しかし現在、不正コピーの蔓延などの影響により、CDは売れなくなってきている。また、HDRでのCMスキップや、インターネットとの接触時間の増大によって、テレビCMの影響力が低下してきている。つまり、テレビCMのタイアップソングは転機に立たされていると言えるのである。このような状況下において、テレビCMのタイアップソングの現状と未来を探ることには意義があると考え、研究動機となった。

第1章「タイアップソングとは」では、タイアップソングを「商業利用のため、映画やドラマの企画、あるいは特定の企業や商品などと契約を結んで提携をおこなう歌」と定義し、曲をプロデュースする側とCMをプロデュースする側の両者の視点から、テレビCMのタイアップソングのメリットを整理した。

第2章「タイアップソングの歴史的変遷」では、CM音楽が、次第に一般の流行歌と融合し、タイアップソングが誕生するまでの過程を述べた。またここ19年間のシングル売上ランキングTOP20の中のCMとのタイアップソングの曲数を調査し、その数が横ばいであることを明らかにした。

さらに第3章「タイアップソングの現状~テレビCMの内容分析~」では、TBS、テレビ朝日、フジテレビ、日本テレビの4放送局において、午後6時から午前12時までの6時間で実際に放送されたCMを分析した。この結果、タイアップソングを使用したCMは全体の28%を占めており、10年前の先行研究の結果(26%)と比較して、割合にほぼ変化が見られないことが分かった。また、タイアップソングを使用したCMは、飲料・嗜好品、情報・通信、自動車・関連品のCMに多く、薬品・医療用品のCMには使われていなかったことから、タイアップソングは、イメージに訴えかけるべき商品のCMに適しており、論理的にアピールすべき商品のCMには適さないことが分かった。

続いて第4章「タイアップソングを取り巻く環境の変化」では、少し視点を変えて、先に述べたような広告業界と音楽業界の変容を説明した。

そして、第5章「タイアップソング衰退期の到来」では、第4章で述べたような環境の変化を受けて、テレビCMのタイアップソングは減少し、「タイアップソング衰退期」が来るだろうと予測した。

最後に第6章「まとめと今後の課題」で、全体をまとめ、今後の課題を提示した。