社会を映す鏡としての女性誌:その歴史的変遷とファッションページのコピー分析

 雑誌は社会を映す。雑誌は世の中のニーズを汲み取って記事にするのと同時に、世の中にニーズを作り出している。つまり、雑誌を読み解くことは、世の中がどうなっているのかを考えることにつながる。その中でも女性誌は、もっとも細分化が進み、競争の激しい雑誌である。多様な女性誌を分類し、位置づけるのは容易ではないが、女性誌の動向をみると“現在がどのような時代”であるかがよくわかる。そのような視点で、本論文を執筆した。

 第1章では、本論文で扱う女性誌について定義を行った。女性誌が歴史的に変遷してきた経緯を踏まえ、以下のように定義した。まず1884年から1960年代までは、女性誌を「主に若い女性に向け、啓蒙的または実用的な観点から生活指南を行った雑誌」とする。次に、1970年代以降の女性誌は、いわゆる現在の女性ファッション誌を指すこととした。

 第2章では、女性誌の誕生から現在まで、歴史的変遷を経年的に記述した。この章の目的は、女性誌の変遷を見ることで、その時代ごとの空気を読むことであるため、必要であれば社会状況の解説なども加えることにした。ここで明らかになった女性誌の大まかな流れは以下の通りである。女性誌は明治期には啓蒙誌であったのだが、大正・昭和50年代までは商業主義に基づいた総合生活実用誌が主流となり、『anan』が登場した昭和50年代以降は女性誌のクラス・マガジン化、ファッション誌化が進み、現在に至っている。

 第3章では、現在の女性誌について概観した。その中でも特に、現在女性誌の中で発行部数トップであり、圧倒的な支持を得ている『CanCam』について考察した。そこから得られた結論は、『CanCam』は巧みなメディア戦略によって広告媒体としての雑誌の最先端の形であり、その原動力になっているのがエビちゃんこと蛯原友里の現代的なキャラ作りにあるということである。

 第4章では、「雑誌は生き物である」と言われることもあるように、1つの雑誌でも時代に合わせて変化しているため、雑誌ごとの変遷を追った。方法は、ファッションページのコピーから、多く使われている言葉を抜き出し、「形容表現」、「動詞表現」、「熟語・造語」、「掲げる効能」に分類する。言葉をピックアップする基準として、見開き1ページの中で、フォントが1番目と2番目に大きいコピー文だけを対象にカウントし、2つ以上用いられている言葉、とすることにした。それを5年ごとに実施し、経年的な変化を求めた。分析対象は1970年代以降に創刊された女性誌の中から、『non・no』、『JJ』、『WITH』の3誌を取り上げた。この分析により、1985年あたりまではファッションとは何か、おしゃれとは何かを指南する教科書風であったのが、それ以降カタログ誌へと方向性を変えたことが結論として得られた。

 最後に、結論に代えて、女性誌が女性の欲望を刺激する装置だということについて考察を行った。